ハトラ(HATRA)の2022-23年秋冬コレクションが発表された。
“境界”の概念を紐解く、テーマは「YOI」
「YOI」がテーマの今季は、“移動が果たす心理的な働きとは何か”を問いながら制作されたコレクション。主観世界と客観世界、虚と実、認識と状況…その境界に存在するあいまいなズレを受け入れることで、ハトラが2021年から掲げている「LIMINAL WEAR」というコンセプトを紐解いていく。
“乗り物酔い”を思わせるモアレのグラフィック
キーワードとなるのは、タイトル名でもある「YOI=酔い」。ルックには、虚と実の間で彷徨う“乗り物酔い”の様子から着想を得た衣服が並んだ。たとえば、トラックジャージの意匠を活かしたロングケープには、東京のデザインスタジオ「Albatro Design」と共作したモアレ表現をオン。意識がぐるぐると回るようなグラフィックで、リミナルな空間の移ろいを布地へと閉じ込めている。
ジャカードで“液晶画面の明滅”を表現
また、液晶ディスプレイの明滅をダブルジャカードで落とし込んだアイテムにも注目。こちらは現代美術作家のHOUXO QUEが手掛けたもので、6色の原色糸を掛け合わせることで画面上の複雑なストライプを表現した。
身体と外の世界を隔てるレイヤード構造
布を重ねることで、身体と空間を隔てたデザインも特徴的だ。“シェルター”をイメージしたというキルティング地のボレロジャケットは、首元を覆うレイヤーによって肩を包み込むようなフォルムに。フロントの合わせをあえて覆い隠したウールメルトンジャケットや、鎧のようなシルエットの布を重ねたレイヤードプリーツスカートなどもまた、身体と空間の境界を意識させる1着であろう。
大胆な異素材ミックス
コレクションには異素材を融合させた衣服が多く並んだが、中でもひときわ目を引いたのが、胸元のファーによってキルティング素材とメッシュ素材を切り替えたオーバーローブ。透け感のあるメッシュ素材の部分だけインナーが見えるのがユニークで、それはまるで違う場所から“テレポート”されている光景にも見える。